『umigiwa profile』epilogue

2023.05.09

昨日まで当たり前にあったはずの景色さえ、姿が変われば記憶から消し去られてしまう。

 

雑草に覆われてしまった木造建築の空き家にかつて団欒の灯りがともされていたこと。現在の駐車場にかつて地域の人々の交流の場となる活気に溢れた商店があったこと。

 

集落が紡いできた歴史こそ残すべきものであるはずが、日常であるが故に記録されないまま、人口減少と共に情報源が消えつつある。

 

地域の人々の記憶を引き出し、記録することは、過去を明確にできるだけにとどまらない。集落の轍から現在の足場を把握することで、未来に向けた一手を見出す鍵となるはずだ。

 

波に攫われる砂浜の足跡のように、軌跡が消えつつある海際の集落。本書がわずかでもその鍵として活きることを心から願う。

 

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以上は、冊子『umigiwa profile』のweb版としての転載です。

発刊   2023年3月31日
企画   価値検証フィールワークユニット2023、友渕 貴之(宮城大学)
制作   前田 有佳利(noiie)
企画協力 日本建築学会海際文化小委員会、Seaside Monkey
制作協力 土井 佐知子(冷水自治会)
写真協力 内海小学校冷水分校資料、了賢寺